利尻島Part3-登山当日編-

今日は念願の登山日です!!

未明にペンションを出発し、車で登山口へ向かいます。

登山口付近にはキャンプ場があり、ここでトイレや最終準備などを済ませてから行きます。

※これより先にトイレはまったくないので、立ち寄った方が良いと思います。

今にも降りそうな空模様ですが、気にせず頑張りましょう!

しばらく森の中を歩き進めていると、甘露泉水と呼ばれる湧水ポイントが出てきました。

甘露泉水のお水は飲めるとのことで、少し手に取って、口に含んでみました。甘露というほど甘いわけではありませんが口当たりが良く、ひんやりとしていたのが印象的でした。

さらに歩き進めていくと、背の高い樹々が多かった森を抜けて、自分の背丈ほどのハイマツ群が辺りを囲むようになってきました。この頃には、雨が降り始め、風も強くなってきていて、ハイマツの陰に隠れるように小さくなりながら進んでいきました。

休憩で足を止めるたびに「これはもしかしたら撤退かも…」と考えつつも、ついに8合目の第二見晴台に到着です。

大暴風ッ!

見晴台どころか一面真っ白!

「もうダメかも」と半ベソをかきながらベンチに座っていると、

見知らぬおば様から

「大丈夫よ!もうすぐだから頑張りましょうね!」とお声がけいただきました。

その言葉を貰ったら、なんだか元気が出てきました、なぜか怒りとともに。

一緒に登りましょうと誘ってくれたおば様を丁重に断って(私のペースが遅いため)、見送ったあと、山頂に向かって叫びました。

ぜつてえ〜に登ってみせるからな!!

自分の体力を過信していたり、利尻山をなめていたわけでは決してありませんが、

先の見えないコースや吹きすさぶ雨風にすっかり自分の気持ちが負けてしまっていたんだと思います。

気持ちが再燃したところで、リュックを背負いなおし、頂上に向けて出発です。

出発してすぐに、避難小屋が見えてきました。

小屋の隣にはトイレブースがあり、持参してきた携帯トイレを使って用を足すことができます。

この避難小屋で食事と休息を取ることにしました。

小屋の中は電気がなく暗かったですが、雨風が凌げるだけでも大変ありがたかったです。

ペンションの方が作ってくれたお弁当にはおにぎりだけでなく、バナナや魚肉ソーセージ、飴など、あまりお腹が空いてなくても手軽に食べられるものも入っており、助かりました。

飴を口に頬張りながら、再スタートです。

雲の中に入ってきたのでしょうか。

前を歩くグループの姿が消えてしまうほどの濃い霧が立ち込めてきました。

下から突き上げるような強い風が押し寄せて、右から吹いたり左から吹いたり、

道もストックや手を使わないと登れないくらいだんだんと険しくなっており、岩にしがみつくようにしてさらに上へ上へと上がっていきます。

ふと周りを見渡すと霧の中からお花畑がぼうっと現れました。

「異世界に来てしまった」

この景色を見たときに直感的に感じ、じっと花を見つめていました。

きっと何年も前からこの場所では夏になるたびに花を咲かせ、

誰も見る人間がいなくなっても、きっとこの先の夏も花は咲き続ける、

けれども今、目の前で風に揺れるこの花は今しか咲かない。

人間の存在を必要としない空間の中で、刹那に生きる花を私は一生覚えていようと思ったのでした。

この光景を見れただけでも、利尻山に踏み入れた意義がありました。

山頂は突然でした。

その前の階段の段差や細い稜線に気を取られて下を向いていたので、

小さな祠が見えたときには「ようやく着いた…!」と安堵の気持ちでいっぱいでした。

好天であればオホーツクの蒼い海が一面に広がる、最高の眺望だったのかもしれませんが、

この時は荒天で真っ白の雲に覆われ、強暴な風向で立っているのも精一杯でした。

旦那さんと記念撮影をして、早々に下山します。

あまり旦那さんの話をしてこなかったのですが、私が風で転ばないように後ろから支えてくれたり、重たい水を背負ってくれたりと、彼なしにこの登頂は成しえなかったです。

下山は来た道を戻るだけですが、

登っていた時よりも水たまりが大きくなっており、ぬかるみもひどくなってます。

滑らないように気を付けながら、下っていきます。

「一刻も早くお風呂に入りたい」

気温は低くはなかったですが、雨衣、ジャケットから染みた雨水が体温を奪い、歩き続けていないと体が冷えてくるのが分かります。ひたすらに足を動かし続け、足の感覚がなくなってきそうな頃、ようやく朝に見た甘露泉水にたどり着きました。

もう少し、もう少し…。

登山口に着いたらペンションに電話するように言われていたので、少しでも早く電話するために、それまで私の後ろを歩いてくれていた旦那さんが先頭に進み、あっという間に抜き去っていきました。ヘロヘロの私とは対照的にまだ体力のある旦那さん、あなたは私を気遣ってそれまでずっと後ろにいてくれていたのね…ありがとう…。

森を抜けた登山口はセミの鳴き声が響き、見上げた雲間から青空が見えていました。

ついさっきまで雲を掴めるところまでいたのに。

利尻山は夢霞のような世界でした。

こんな悪天候の中、最後まで安全に登山させてくれた利尻山、ペンションの方、お声がけしてくれたおば様、そして旦那さん、全部に感謝です。本当にありがとうございました。

あの花は本当に咲いていたんですかね?

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